Adobeが、IllustratorのWindows版に存在する重大な脆弱性を修正するセキュリティアップデートを公開しました。
対象はIllustrator 2025の29.8.10以前と、Illustrator 2026の30.7以前。修正版としてIllustrator 2025は29.8.11、Illustrator 2026は30.8が案内されています。
AdobeはCreative Cloudデスクトップアプリから最新版へ更新するよう推奨しています。
普段Illustratorを仕事で使っているWindowsユーザーは、制作を始める前に一度バージョンを確認しておいた方がよさそうです。
「雨漏りが起きた」という発表ではなく、「屋根の一部が腐っているのを見つけて直した」という段階なので、今すぐ慌てる必要はありません。
ただ、発表されたことで悪意のある人にも「そこが弱かった」と知られるため、対象ユーザーは早めに更新しておくのが安全です。
Illustrator 2025/2026のWindows版が対象
Adobeのセキュリティ情報「APSB26-131」で、影響を受けるバージョンは次のように示されています。
| 製品 | 影響を受けるバージョン | プラットフォーム | 修正版 |
|---|---|---|---|
| Illustrator 2025 | 29.8.10以前 | Windows | 29.8.11 |
| Illustrator 2026 | 30.7以前 | Windows | 30.8 |
修正版そのものはWindowsとmacOSの両方に提供されていますが、Adobeが今回「影響を受けるバージョン」として挙げているのはWindows版です。
Macユーザーまで今回の脆弱性の対象だと読み違えないようにしたいところです。
修正された脆弱性は3件
今回修正されたのは、CVE番号が付与された3件の脆弱性です。
| CVE番号 | 内容 | 影響 | CVSS |
|---|---|---|---|
| CVE-2026-75991 | 不適切な入力検証 | 任意のコード実行 | 8.6 |
| CVE-2026-75990 | 不正な承認 | 任意のコード実行 | 8.6 |
| CVE-2026-75992 | 領域外メモリーへの書き出し | 任意のコード実行 | 7.8 |
いずれもAdobeによって深刻度「重要」と評価されています。
CVEは、公開されたセキュリティ上の脆弱性へ付けられる共通の識別番号です。製品や企業をまたいで同じ問題を追跡しやすくするために使われます。
今回の3件はいずれも、悪用された場合に「任意のコード実行」へつながる可能性があります。
「任意のコード実行」とは何が危ないのか
任意のコード実行は、攻撃者が本来ユーザーの意図していないプログラムや処理をコンピューター上で動かせる可能性がある脆弱性です。
たとえば、細工されたファイルなどをきっかけに、悪意のある処理が走るといったケースが考えられます
今回Adobeが公開しているCVSSベクターでは、3件ともユーザー操作を必要とする条件が示されています。
CVSSは、脆弱性の危険度を数値化するための国際的な評価方式です。0〜10の範囲で評価され、数字が大きいほど影響が深刻と判断されます。
今回のうち2件は8.6、もう1件は7.8です。
普段の制作ソフトだからこそ後回しにしがちですが、仕事用PCでは優先して更新したい内容です。
現時点で「広く悪用されている」事例は確認されていない
一方で、必要以上に不安になる必要もありません。
Adobeは、今回修正された脆弱性について、広く悪用されている事例は確認していないとしています。
つまり、すでに世界中で攻撃が多発しているため緊急パッチが出た、という状況ではありません。
脆弱性が確認され、悪用される前に修正された段階です
とはいえ、脆弱性の詳細が公開された後は攻撃側も内容を調査できます。更新可能な環境なら、古いバージョンを使い続ける理由はあまりありません。
Illustratorを仕事で使う人ほど更新を忘れやすい
デザイン制作では、ソフトの自動更新を切っている人も少なくありません。
アップデート後にプラグインが動かなくなる、操作感が変わる、既存案件でトラブルを起こしたくない、といった理由があるからです。
だってAdobeって不具合だらけで……
ただ、機能アップデートとセキュリティアップデートは分けて考えた方がいいでしょう。
今回のIllustrator 2025なら、2026版へメジャーアップデートしなくても29.8.11へ更新できます。
つまり、制作環境をIllustrator 2025のまま維持しつつ、今回のセキュリティ修正だけを反映する選択肢があります。
長期案件や印刷案件でバージョンを固定している人には、この点が重要です。
Creative Cloudから最新版へ更新できる
AdobeはCreative Cloudデスクトップアプリの更新機能を使って、最新版へアップデートするよう案内しています。
確認したい修正版は、Illustrator 2025なら29.8.11、Illustrator 2026なら30.8です。
Illustratorを起動して「ヘルプ」からバージョン情報を確認するか、Creative Cloudデスクトップアプリでインストール済みバージョンを確認できます。
制作会社や企業でAdobe製品を管理している場合は、個人判断で更新できないケースもあります。その場合は、社内のシステム管理担当へ「APSB26-131」の適用状況を確認する方が確実です。
受け取ったIllustratorファイルを開く仕事では特に注意
グラフィックデザイナーやDTPオペレーターは、自分で作ったデータだけを開くとは限りません。
- クライアント
- 外部デザイナー
- 印刷会社
- 制作会社
取引先から.aiファイルや関連データを受け取る機会があります。
制作ソフトの脆弱性で怖いのは、こうした「外から届いたファイルを日常的に開く」という仕事の性質と相性が悪いことです。
今回公開された情報だけから、特定の.aiファイルを開けば必ず攻撃が成立すると断定することはできません。
ただし、ユーザー操作を必要とする任意コード実行の脆弱性である以上、仕事用PCを修正版へ更新しておく意味は大きいでしょう。
古いバージョンを使っている人は「2025だから安全」ではない
Illustratorは新バージョンへ移行せず、一世代前を使い続ける人もいます。
印刷会社との互換性や、プラグインの対応状況を考えると珍しいことではありません。
今回についてはIllustrator 2025も対象です。
「2026版だけの問題だから、自分は関係ない」とは限りません
29.8.10以前を使っているWindowsユーザーは、29.8.11への更新が必要です。
セキュリティ更新は制作環境のメンテナンスとして考えたい
Illustratorのニュースというと、新機能や生成機能、大きなUI変更の方が目立ちます。
ただ、仕事道具として考えるなら、今回のような更新の方が優先順位は高いです。
デザインデータそのものだけでなく、クライアント情報や未公開素材、契約書、請求書など、制作PCには仕事上のデータが集まりやすいからです。
Adobeも今回の脆弱性が広く悪用されている事例は確認していないとしています。
慌ててIllustratorをアンインストールするような話ではありません。
対象のWindowsユーザーは、Illustrator 2025なら29.8.11、Illustrator 2026なら30.8へ更新する。まずはそれで十分です。
普段アップデートを止めている人ほど、今回だけはバージョンを確認しておきたいところです。
関連リンク
- Adobe|Illustratorに関するセキュリティアップデート APSB26-131
Adobe公式のセキュリティ情報を見る - Adobe|セキュリティ情報一覧
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