ファインコードアンドレトリック株式会社は2026年9月16日、AIによる画像生成から編集、ベクター化、高解像度化、制作過程の記録までを一つの環境で行えるWebサービス「PixVec(ピクスベック)」の提供を開始しました。
- 80種類以上のスタイルを使った画像生成
- PNGやJPEGをSVGへ変換する「Image 2 Vector」
- 2K・4Kへのアップスケール
- 画像の部分修正
- ラフスケッチからの仕上げ
などに対応します。
AIで画像を作って終わるのではなく、その画像をIllustratorなどへ持ち込み、デザイン素材として整えていくところまで視野に入れているのが特徴です。
AI画像の「生成後」までまとめたPixVec
画像生成AIをデザイン制作に使う場合、画像を1枚生成しただけで完成するとは限りません。
生成後に、
- 不要な部分を修正する
- 解像度を上げる
- SVGへ変換する
- Illustratorなどで調整する
- 制作条件を記録する
- 完成した素材を保存・管理する
といった作業が続くケースがあります。
PixVecは、この一連の工程を一つのWebアプリケーションへまとめることを狙ったサービスです。
主な機能を整理すると以下のようになります。
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| Visual Generation | テキストから画像を生成 |
| プリセットスタイル | 80種類以上 |
| Image 2 Illustration | 写真や画像をイラストへ変換 |
| Draw 2 Fine | ラフスケッチからビジュアルを生成 |
| リファレンス編集 | 画像の一部分を指定して修正 |
| Image 2 Vector | PNG・JPEGなどをSVGへ変換 |
| Upscaler | 2K・4Kへ高解像度化 |
| エビデンスシート | プロンプトや使用モデルなどを記録 |
| ライブラリ | 制作した画像やSVGなどを管理 |
| チーム共有 | チーム内でライブラリを共有 |
同社発表では、画像生成モデルを切り替えて利用できる仕組みも用意されています。
80種類以上のスタイルから画像を生成
PixVecには、イラスト、グラフィック、マンガ、水彩、インク、フラット表現など80種類以上のスタイルがあらかじめ用意されています。
ユーザーは描きたい内容を文章で入力し、スタイルを選んで画像を生成します
たとえば同じプロンプトでも、水彩とフラットイラストを切り替えながら方向性を比較できるため、複雑なプロンプトを何度も組み直すより、ビジュアルの初期検討を進めやすい設計です。
同社によると、プリセットされたスタイル用プロンプトには特定のキャラクター名、作品名、作家名などを使わず、一般的な表現のみを採用しています。
生成AIで問題になりやすい「○○風」の指定をプリセット側から避ける考え方です
写真をイラスト化する「Image 2 Illustration」
テキストから新しい画像を生成するだけでなく、手元の画像を元に制作する機能も用意されています。
「Image 2 Illustration」では、写真や既存画像をアップロードし、それを元にイラストへ変換できます。
写真を参考に、
- Webサイト用の挿絵へ変換する
- プレゼン資料用のイラストへ整える
- 写真とトーンを合わせたイラストを作る
- ビジュアル案を複数のテイストで検討する
といった使い方が考えられます。
AI画像生成というとゼロから絵を作る用途が目立ちますが、デザイン業務では「すでにある素材を別の形式へ変える」場面も多いため、こちらの方が使いやすい案件もありそうです。
ラフスケッチを仕上げる「Draw 2 Fine」
「Draw 2 Fine」は、ラフスケッチや簡単な線画を元にビジュアルを生成する機能です。
文章だけで画像生成AIへ指示すると、レイアウトや被写体の位置までAI側へ委ねることになります。
それに対し、自分でラフを描いてから生成すれば、
- 「人物を左に置く」
- 「商品を中央へ置く」
- 「右側を文字スペースとして空ける」
といった画面設計を先に人間側で決めやすくなります。
広告、バナー、キービジュアルなど、最初からレイアウトの条件が決まっている仕事では、テキストだけの生成より扱いやすい場面がありそうです。
気になる部分だけ直せる「リファレンス編集」
AI画像を何度か生成していると、
- 「全体はこれでいいけれど、手だけ直したい」
- 「服だけ変えたい」
- 「背景にある不要な物だけ消したい」
という状態になることがあります。
PixVecの「リファレンス編集」では、画像の一部分を指定し、全体の構成や表現をなるべく維持したまま修正できます。
同社が挙げている例には、
- サングラスを外す
- 靴を変更する
- 服装を変更する
- 髪型を変える
- 手や指を整える
- ロゴや小物を差し替える
- 不要な物を削除する
- モノクロイラストの一部を着彩する
などがあります。
採用候補の画像ができるたびに全体を再生成するのではなく、完成に近づけながら修正していくための機能です。
PNGやJPEGをIllustratorで編集できるSVGへ変換
デザイナーにとって目を引くのが「Image 2 Vector」です。
PNGやJPEGなどのラスター画像をSVG形式へ変換できます。
ラスター画像とは、ピクセルの集合で表現された画像です。JPEGやPNGが代表的で、大きく拡大すると輪郭が粗く見えることがあります。
SVGは、図形や線などの情報を元に描画するベクター形式で、拡大・縮小しても画質が劣化しにくく、Adobe Illustratorなどで編集できます。
PixVecでは、
- ロゴ案
- アイコン
- ピクトグラム
- 図版
- シンプルなイラスト
などをSVGへ変換する用途を想定しています。
AIが生成した画像をそのまま納品データとして使うのではなく、SVGへ変換してからIllustratorでアンカーポイントや色を調整する、といった制作フローへつなげられます。
ただし、ラスター画像を自動的にベクター化した場合、どこまで整理されたパスになるかは元画像によって変わります。
複雑な写真や細密イラストまで「Illustratorで扱いやすいきれいなデータになる」と考えるのではなく、ロゴ案やアイコンなど輪郭が明確な素材から試すのが良さそうです。
生成画像を2K・4Kへアップスケール
生成した画像や既存画像を2K・4Kへ高解像度化するアップスケール機能も搭載されています。
単純に画像サイズを引き伸ばすのではなく、輪郭や質感を補完しながら解像度を上げる方式と説明されています。
用途としては、
- Webサイトのメインビジュアル
- プレゼンテーション
- 広告
- 大きな画像を使うWebデザイン
- 印刷物
などが想定されています。
AI画像は画面上で見るだけなら問題なくても、大きな印刷物へ使おうとすると元データの解像度が足りない場合があります。
生成からアップスケールまで同じサービス内で進められるため、生成画像を別の高解像度化サービスへ移す工程を減らせます。
ただし、4K化したから印刷用途すべてに適するとは限りません。
印刷では画像そのもののピクセル数だけでなく、使用サイズや必要なdpiも関係するため、入稿時には使用サイズに対して十分な解像度があるか確認する必要があります。
制作条件を残す「エビデンスシート」
PixVecで個人的に気になるのが、画像生成そのものより「エビデンスシート」です。
AIを仕事で使った場合、
- 「この画像は何で作ったのか」
- 「どんなプロンプトを入力したのか」
- 「どの画像を参考にしたのか」
を数か月後に確認したくなることがあります。
PixVecでは、制作に関する情報をまとめて記録できます。
記録対象には、
- 生成日時
- ユーザーが入力したプロンプト全文
- スタイル側のプロンプト全文
- 使用した画像生成モデル
- 参照画像
- C2PAに関連する情報
などが含まれます。
C2PAは、画像や動画などがどのように作成・編集されたのかという来歴情報を扱うための技術標準です。デジタルコンテンツの出所や編集履歴を、改ざん検知可能な形で扱うことを目的としています。
社内制作やクライアントワークで生成AIを使う場合、完成画像だけ残っていて制作条件がわからない状態より、後から追える方が管理しやすくなります。
ただし、PixVec側も、エビデンスシートが著作権・商標権・安全性そのものを保証するものではないとしています。
記録を残していることと、その画像に権利上の問題がないことは別です。
生成した画像やSVGをライブラリで一元管理
PixVecで生成・変換した素材はライブラリへ保存できます。
保存できるのは生成画像だけではありません。
SVGへ変換したファイルや、2K・4Kへアップスケールしたデータも一緒に管理できます。
お気に入り、検索、データ種別による整理にも対応し、以前作った画像を開いて、そこから再び編集、ベクター化、高解像度化といった次の工程へ進めます。
生成AIを長く使っていると、
- 「前に作った画像がどこにあるかわからない」
- 「元画像とアップスケール版が別フォルダにある」
- 「どのプロンプトで作ったのかわからない」
という問題が起きやすくなります。
制作履歴と素材管理を同じ場所に置く考え方は、画像生成回数が増えるほど効いてきそうです。
チーム利用にも対応
PixVecにはチームライセンスも用意され、メンバー間で共通ライブラリを利用できます。
想定されているのは、
- デザイン会社
- 編集会社
- 広告代理店
- 出版社
- 企業の広報部門
- マーケティング部門
などです。
個人向けのAI画像生成サービスというより、制作会社が業務の中へAIを組み込むケースまで意識した設計と言えます。
特に、誰が何を生成したのかを後から確認できるエビデンス記録と共有ライブラリは、複数人で使うと意味が大きくなります。
PixVecがおもしろいのは「生成AI」よりその後
画像生成AIそのものは、すでに選択肢が多い状態です。
その中でPixVecの差が出やすいのは、生成モデルそのものよりも、
- 生成
- 修正
- ベクター化
- 高解像度化
- 記録
- 管理
までを同じ制作環境へまとめた点でしょう。
特にデザイナーの場合、AIで画像を作ることより、その画像を「制作物として使える状態へどう持っていくか」の方が手間になることがあります。
画像を生成して、別サービスでアップスケールし、別サービスでベクター化し、Illustratorへ移し、生成条件はメモに残す。
PixVecは、この分散した工程をまとめる方向へ振っています。
AI画像生成サービスというより、AIを含んだビジュアル制作ツールとして見た方が立ち位置をつかみやすそうです。
一方で、SVG変換後のパス品質、アップスケール時の再現性、部分編集で元画像をどこまで維持できるかなどは、制作現場で使うなら気になるポイントです。
サービス開始直後ということもあり、このあたりは今後、実制作データを使った検証まで見てみたいところです。
関連リンク
PixVec公式
https://pixvecs.com/
PR TIMES:AI画像を「つくる」から「使える」へ。画像生成・ベクター化・高解像度化・エビデンス記録を統合した「PixVec」提供開始
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000190275.html
C2PA:Content Credentials Technical Specification
https://spec.c2pa.org/specifications/specifications/2.4/specs/C2PA_Specification.html