1991年に登場したソニックは、35年間ずっと同じ姿だったわけではありません。
ゲーム機の性能も、グラフィックの作り方も、その時代に格好いいとされる表現も変わってきました。その35年間を制作資料から振り返りながら、現在活動する16名のクリエイターが歴代ソニックを自分の表現で作り直す展覧会「SONIC the Exhibition -ACROSS GENERATIONS-」が、2026年10月9日から池袋PARCOで開催されます。
設定資料や開発秘話を見るアーカイブ展示だけでなく、イラスト、グラフィック、陶器、ぬいぐるみ、ネオンなど異なる表現方法で一つのキャラクターを解釈した作品が並ぶため、キャラクターデザインやイラストレーションに関わる人にも見どころの多い展示になりそうです。
ソニック35年間の「作られ方」を見る
会場では、1991年に始まった「ソニック」シリーズの歴史を、ゲーム、キャラクター、デザイン、音楽、アートという複数の方向から振り返ります。
展示される予定なのは、歴代作品を並べた年表だけではありません。
- キャラクターやゲーム制作時の設定資料
- 開発にまつわるエピソード
- 歴代作品のアートワーク
- 音源・楽曲
- 初公開となるアーカイブ
- 現代のクリエイターによる新作アート
完成したゲームだけを見ていると、キャラクターや世界観がどのような検討を経て現在の形になったのかは見えません。
設定資料を見る面白さは、完成形だけではわからない判断の跡を追えることにあります。輪郭が変わった、装飾がなくなった、色が整理されたといった変化には、それぞれ理由があります。
16名が同じキャラクターをそれぞれの方法で表現
新作アートのキュレーションを担当するのは、クリエイティブスタジオのR11Rです。
参加クリエイターは16名。それぞれの作品は、ソニックが歩んできた年代に合わせた4テーマへ分けられています。
1990s
- 中村佑介さん
- 井上卓さん
- TSCRさん
- HUKANZENさん
- きくちゆうきさん
2000s
- STUDY優作さん
- アオイネオンさん
- Panasony™さん
2010s
- タケウチ リョースケさん
- BRIDGE SHIP HOUSEさん
- SIOさん(The TOMODACHI!)
- ともわかさん
NEXT RUN
- move naoさん
- はくいきしろいさん
- 今田ユウキさん
- ニロス屋さん
単に16人へ「ソニックを描いてください」と依頼した企画ではなく、年代を区切っているところが面白いところです。
同じキャラクターでも、どの時代のソニックを見て育ったかによって記憶している姿が違います。
中村佑介さんが描いた「90年代の音速」

すでに一部の作品も公開されています。
中村佑介さんが制作したのは「90年代の音速」。
中村さんは中学生の頃にソニックのアートワークから強い影響を受けたといい、90年代のソニックを自身の作品として再構成しています。
中村さんといえば、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのCDジャケットや『夜は短し歩けよ乙女』などの書籍カバーで知られるイラストレーターです。
今回の作品で興味深いのは、現在の中村さんの作風と、10代の頃に受けたソニックからの影響を同時に見られることです。
クリエイターの作品を見るとき、「この人らしい絵」で終わらせず、その作風が何を見て形成されたのかまでたどると見え方が変わります。
35周年という長い時間を扱う今回の展示では、キャラクターそのものの歴史だけでなく、そのキャラクターを見て育ったクリエイター側の時間も作品へ入り込んでいます。
『ソニックCD』を現在の感覚で描き直す

TSCRさんは『ソニックCD』を題材に「Stardust Speedway Bad Future」を制作しました。
クラシックソニックとメタルソニックの対決を描き、ステージの色彩やサイバーな街並みを取り入れています。
面白いのは、TSCRさんが1993年の『ソニックCD』を発売当時に遊んだ世代ではないことです。
後年発売された『ソニックオリジンズ』をきっかけに過去作品へ触れ、90年代のタイトルを現在のクリエイターが再発見しています。
昔のデザインを参照するとき、当時を知っている必要はありません。
古いゲーム、広告、雑誌、パッケージ、CDジャケットなどを現在の視点で見ると、発売当時とは別の部分が魅力として見えてくることがあります。
レトロな表現を制作へ取り入れるときにも参考になる見方です。
2010年代は「動画を見る文化」まで作品に入る

ともわかさんの「PLAY BACK」は、キャラクターそのものだけでなく、2010年代にソニックと出会った環境まで作品へ取り込んでいます。
題材になっているのは、ゲーム実況、歌ってみた、ボーカロイドなどが広がった当時のインターネット文化です。
動画の再生画面からソニックが飛び出してくるような構成になっています。
ゲームのキャラクターを年代別に振り返るとき、キャラクターデザインの変化だけを見る方法もあります。
しかし、そのキャラクターをどの画面で見ていたのかまで考えると話が変わります。
90年代ならブラウン管テレビでゲームを遊んでいた人が多く、2010年代にはYouTubeなどの動画を通じてゲームを知る人も増えました。
同じソニックでも、最初に出会った媒体が違います。
作品そのものだけでなく、作品と人が出会った環境までデザインの題材にできることが、ともわかさんの作品から見えてきます。
イラストだけではない。陶器、ぬいぐるみ、ネオンも使う
16名の作品は平面イラストに限定されていません。
発表されている表現方法には、
- イラスト
- 絵画
- 陶器
- ぬいぐるみ
- ネオン
- ヘッドギア
などがあります。
キャラクターの周年企画というと、さまざまなイラストレーターが同じキャラクターを描く企画を思い浮かべやすいですが、今回は素材そのものを変えています。
同じ青いハリネズミでも、紙に描くのと陶器で作るのでは、考えなければならないことが違います。
- 輪郭をどこまで残すか
- 特徴的なパーツは何か
- 色がなくてもソニックだと認識できるか
- 立体へ置き換えたとき、横から見ても成立するか。
キャラクターデザインを研究するときは、「似せて描けるか」だけでなく、別の素材へ変えてもそのキャラクターだとわかる要素を探してみると面白いです。
35年間続くキャラクターは、何を変えて何を残してきたのか

ソニックは1991年の誕生から35年が経っています。
長く続くキャラクターでは、デザインをまったく変えないことも、毎回作り直すこともできません。
時代に合わせて調整しながら、「これがなくなったら別のキャラクターになる」という特徴を残す必要があります。
ソニックなら、青い身体、大きな目、尖ったシルエット、赤い靴など、離れた場所から見ても識別できる要素があります。
一方で、身体の比率や目の表現、線の処理、3Dモデルとしての見え方などは時代とともに変化してきました。
キャラクターを長期間運用するとき、「設定画を絶対に変えないこと」と「キャラクターらしさを守ること」は同じではありません。
今回のアーカイブ展示と16名の新作を続けて見ると、どこまで変えてもソニックとして成立するのかを比較できます。
オリジナルキャラクターを制作しているイラストレーターや漫画家にとっても、参考になる見方でしょう。
二次創作とは違う「公式IPを別の作家へ渡す」面白さ

今回の16作品は、公式展覧会のために制作された作品です。
ここにはファンによる二次創作とは別の面白さがあります。
元のキャラクターらしさを守りながら、参加クリエイター自身の表現も残さなければなりません。
原作へ近づけすぎれば、その作家に依頼した意味が薄くなります。反対に、自分の作風へ寄せすぎてキャラクターの特徴が消えれば、ソニックの企画として成立しにくくなります。
企業IPとのコラボレーションでクリエイターが直面するのも、この間にある調整です。
IPはIntellectual Propertyの略で、漫画やゲーム、キャラクターなどに関わる知的財産を指します。 クリエイターとのコラボレーションでは、キャラクターのイメージや使用ルールを守りながら、新しい表現へ展開する仕事が発生します。
今回の展示は、16人がその境界をそれぞれどこに置いたのかを比較できる機会でもあります。
展示作品の一部は購入できる予定
16名が制作した新作アートの一部は販売も予定されています。
販売方法などは後日、展覧会の特設ページで案内されます。
展示を見るだけでなく作品を販売するところまで含まれているため、クリエイターの周年企画への参加方法という意味でも興味深い事例です。
企業がキャラクターを使って記念グッズを作るだけではなく、外部のクリエイターへ解釈を委ね、その作品自体を展示・販売する。
IPとクリエイターを組み合わせた企画の作り方としても見ておきたいところです。
10月9日から池袋PARCOで開催
「SONIC the Exhibition -ACROSS GENERATIONS-」は、2026年10月9日から11月1日まで池袋PARCO本館7階のPARCO FACTORYで開催されます。
営業時間は11時から21時で、最終受付は20時30分。最終日の11月1日は18時に閉場します。
入場料は1,500円。10月9日から11日までの最初の3日間については日時指定前売券となり、9月29日12時から10月4日23時59分まで抽選受付中です。
ゲームが好きだから見る、という楽しみ方だけではありません。
キャラクターが35年間でどう変わったのか、制作途中ではどんな検討があったのか、別のクリエイターへ渡したときに何を残せば同じキャラクターとして成立するのか。
設定資料と完成作品、そして16通りの再解釈を同じ会場で比べられるなら、キャラクターデザインを仕事にしている人や、オリジナルキャラクターを育てている人にも見る理由のある展覧会です。
関連リンク
SEGA|SONIC the Exhibition開催発表
池袋PARCO|SONIC the Exhibition 特設ページ
R11R|参加クリエイター・新作アート詳細