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17年前のiMacをクレーンに吊って映画撮影|1400万再生から30人の制作へ

「高価なカメラがなければ、映像作品は作れない。」そんな考えを乱暴な方法で壊したクリエイターがいます。

英国の映像作家Will Norman氏は、2009年製のiMacを15ポンドで購入し、内蔵Webカメラだけを使って映像を撮影しました。

15ポンドは、だいたい3,000円ちょいです

最初はクリストファー・ノーラン監督のIMAXへのこだわりをパロディにした「Shot on iMac」という小さな企画でした。

ところが動画は1,400万回以上再生。

反響を見た人たちから「参加したい」「機材を貸したい」という連絡が集まり、最終的には約30人のチームで『オデュッセイア』を10分に再構成した短編映画『The Oddersy』まで作っています。

撮影機材は2009年製iMac

creativeboomより引用

使用したのは、17年前のiMacに搭載されたWebカメラです。

中古価格は15ポンド。iMacを受け取りに行くために使ったUberの料金の方が高かったそうです。

当然ながら映画撮影向けの機材ではありません。

フォーカスを自由に操作することもできず、ダイナミックレンジも狭い。

Creative Boomの取材でNorman氏は、時には顔が紫色になることもあったと話しています。

普通なら「使えないカメラ」で終わるところですが、この作品ではその制約自体が制作方法になっています。

iMacに穴を開けて三脚へ固定

そもそもiMacは撮影用カメラではないので、三脚穴などありません。制作チームは本体のベース部分に穴を開け、三脚へ取り付けられるよう改造しました。

ロケではキャンプ用バッテリーから電源を供給。

自転車をカメラドリー代わりに使い、Webカメラの前にはスマートフォン用の外付けレンズを装着しています。

映像エフェクトに使ったのは、Macに昔から入っているPhoto Boothです。最新の生成AIでもVFXソフトでもありません。

25フィートのクレーンにiMacを吊るす

最も無茶なのが船のシーンです。

『オデュッセイア』なので、海を進む船を撮影する必要があります。

そこで制作チームはiMacを約25フィートのTechnocraneへ取り付け、湖に浮かべたゴムボートの上へ吊り下げました。

iMacで巨大な映画用クレーンを使うという、機材の価格差がヤバい光景です

作品にはこのほか、遠近法を使った巨人、砂の上に置いた小さな馬など、アナログな工夫が多数使われています。

最新技術で「何でも作れる」こととは正反対ですが、制作過程だけでも見たくなる強さがあります。

さらにiMac単体では録画できなかった

問題はまだあります。

古いiMacは、自分のWebカメラ映像を録画しようとするとフリーズしてしまいました。

そこでチームはiPadをiMacの背面へ結束バンドで固定。iMacのWebカメラ映像をiPadへ送り、iPad側で画面録画するという方法を使いました。

つまり、

  • iMacで撮る
  • iPadへ映す
  • iPadの画面を録画する

という妙な撮影システムです。

しかも画面録画なので、せっかく完璧に撮れたテイクへマウスカーソルやソフトウェアアップデートの通知が入り、台無しになる可能性までありました。

不便を解決するたびに、さらに別の問題が増えています。それでもNorman氏は、この制約こそ制作で最も面白い部分になったと話しています。

creativeboomより引用
creativeboomより引用

1400万再生が「本当に作ろう」へ変わった

最初から30人で映画を制作する計画だったわけではありません。

きっかけは、ノーラン監督をもじって「Christopher Notlan」を名乗り、iMacだけで撮影した短いパロディでした。

それが1,400万回以上再生されます。

動画を見た人たちが自分の時間や機材、技術を提供し始め、冗談だった企画が実際の短編映画へ発展しました。

高性能なカメラを使ったことではなく、「iMacで映画を撮る」というアイデアそのものが人を集めています

これはSNS時代の自主制作としてかなり面白いです。

予算を集めてから企画を始めるのではなく、小さなアイデアを先に公開し、その面白さによって制作体制が後から大きくなっています。

AIとは正反対に見えて、根っこは近い

この作品が紹介されたタイミングも面白いところです。

映像業界では生成AIによって、これまで大きなスタジオや予算が必要だった映像を少人数でも制作できるようになる、という話が続いています。

『The Oddersy』は逆です。最新AIどころか、17年前のWebカメラを使っています。

それでも根っこにあるものは似ています。

高価な制作環境を持っていなくても、アイデア次第で大きな作品へ挑戦できる。

ただし『The Oddersy』では、足りないものを自動生成するのではなく、人間がひたすら工夫しています。

  • ピントが合わないなら、その状態で成立する画を考える。
  • カメラが動かせないならiMacごと動かす。
  • 録画できないならiPadを背中に貼る。

便利な道具が増え続けている今だからこそ、この無茶な制作方法が妙に魅力的に見えます。

creativeboomより引用

制約がある方がアイデアは見えやすいこともある

制作環境を整えることはもちろん大切です。

カメラでもPCでもソフトでも、高性能な方ができることは増えます。

ただ、道具が揃うことと作品が面白くなることは同じではありません。

『The Oddersy』の場合、「2009年製iMacだけで映画を撮る」という馬鹿げた制約が作品の企画そのものになりました。

性能の悪さを隠そうとせず、そこから出てくる工夫まで含めて見せています。

生成AIも最新カメラも誰でも使えるようになっていけば、単純に「高品質なものを作れる」ことの珍しさは少しずつ下がります。

そうなったとき、何を使ったかより、なぜその方法で作ったのかの方が作品を覚えてもらう理由になるのかもしれません。

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デザイン制作とWeb運営に携わりながら、クリエイター向けサービスや制作ツールの情報を追っています。

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