業界・キャリア

AI生成物を直す仕事が急増|デザイン系の「AI修正案件」は2023年比約8倍に

生成AIがクリエイターの仕事を奪うのか。

ここ数年ずっと議論されてきたテーマですが、実際のフリーランス市場では少し奇妙な仕事が増えています。

AIが作ったものを、人間が使える状態まで直す仕事です。

Upworkが2026年8月に公開したデータでは、AI生成物を人間が改善する案件は前年比70%増。Design & Creativeカテゴリーでは、2023年と比較して関連する求人投稿が約8倍に増えました。

  • 画像生成AIで作ったロゴを印刷できるデータへ直す
  • 余分な指や崩れた形をPhotoshopで修正する
  • AI動画の不自然な動きを直す
  • AI文章を人間らしく書き直す

生成AIによって仕事が完全になくなったというより、制作の前半をAI、後半を人間が担当する案件が増えているようです。

「AI cleanup」の仕事が急増

The Guardianが複数のフリーランスプラットフォームから集めたデータを見ると、伸び方はかなり大きくなっています。

サービスAI修正関連の動き
Freelancer.com2025年8月〜2026年6月に関連求人が87%増、10,760件に
UpworkAI remediation案件が前年比70%増
Upwork Design & Creative2023年比で約8倍
Fiverr「AI cleanup」の検索が2023年比20倍超

Freelancer.comでは「correct AI」「AI hallucination」「AI error」といった表現を含む案件が増えており、最も多い職種はグラフィックデザイン。その後に動画編集、校正、ライティングが続きます。

つまり、AI開発者だけの話ではありません

かなり直接的に、デザイナーや動画編集者、ライターの仕事へ入ってきています。

ロゴを生成したあと、結局デザイナーへ依頼

典型的なのがグラフィックデザインです。

The Guardianが取材したスペインのフリーランスデザイナーは、以前はロゴやパッケージを一から制作する依頼を受けていました。

ところが2025年には、問い合わせの約90%がAIで生成されたロゴやパッケージを修正する案件になったと話しています。AI修正だけで年間収入の60〜70%を占める時期もあったそうです。

一見すると、「AIでロゴを作れるならデザイナーは不要」になったように見えます

実際には生成したあと、

  • ぼやけている
  • 印刷に使えない
  • 形がおかしい
  • ベクターデータが必要
  • 文字を直したい

という問題が出て、結局デザイナーへ戻ってくるケースがあります。

生成AIが「最初の案を作る」ハードルを大きく下げた一方、納品物として成立させる工程までは完全には消えていません。

「ちょっと直すだけ」のはずが、作り直しになる

この仕事にはやっかいな問題もあります。

クライアント側から見ると、すでにAIで完成画像があるため、「少し修正するだけ」に見えやすいことです。

しかしデザイナー側からしてみれば、元データの構造が存在しません。

たとえば生成AIで作ったロゴの一部分だけ形を変更したくても、Illustratorで作ったデータのようにパーツが分かれているわけではありません。

結果として、一からトレースしたり、文字を組み直したり、構図そのものを再制作したりする必要が出ます。

The Guardianが紹介したイラストレーターは、AI生成された児童書用イラスト13〜15枚の修正を約500ドルで依頼されました。依頼側は1枚15分程度と想定していましたが、実際には数時間から数日かかる場合もあるとして断っています。

「AIがあるから安く、早くできるはず」という認識と、実際の修正工数にかなり差があるようです。

画像だけでなく動画にも広がる

AI cleanupは画像だけではありません。

動画では、

  • 不自然な反射を消す
  • AI音声の違和感を修正する
  • 3Dモデルの崩れを直す
  • 影や物理挙動の矛盾を修正する

といった依頼が出ています。

場合によっては「直せない」という判断も必要です。

元の映像に問題が多すぎれば、一から制作した方が早い。

これはデザインでも同じでしょう。AI出力の修正スキルだけでなく、どこまで直せるか、どこから作り直すべきかを判断する能力まで仕事になります。

AIは「完成品」ではなく「最初のドラフト」になっている

Upworkはこの状況を、AI output is just the first draftという考え方で整理しています。

AIはコード、文章、画像、動画などを高速に生成できます。

しかし、クライアントへ納品できる品質まで仕上げる段階では、人間による確認、専門知識、判断、修正が残るケースが多いという分析です。

これは生成AIの使われ方としてかなり現実的です

「全部AIに任せる」でも「AIを一切使わない」でもありません。

  • AIで初稿を作る
  • 人間が問題を見つける
  • 仕上げる

現在の仕事では、この組み合わせが増えています。

ただし「AI修正屋」が安定した職業になるとは限らない

AI cleanupの需要が伸びているからといって、新しい安定職が生まれたと考えるのは早そうです。

AIモデル自体が改善されれば、現在人間が修正しているミスの一部は減ります。

余分な指や崩れた文字のような、分かりやすい生成ミスはすでにかなり改善されています。

今後も同じ種類の修正需要が増え続ける保証はありません。

さらに、修正案件は「元から作るより簡単」と見なされやすく、価格を下げられやすい問題があります。

仕事として存在していることと、良い仕事であることは別です。

それでも「仕上げられる人」の価値は残りやすい

今回のデータを見ると、AI時代のクリエイターに必要なのは単に生成AIを操作できることだけではなさそうです。

むしろ重要になるのは、AIが出したものを見て、

  • 何がおかしいのか。
  • なぜ使えないのか。
  • どう直せば商用レベルになるのか。

を判断できることです。

Photoshopを操作できても、どこを直せば自然になるのか判断できなければAI生成画像の修正はできません。

文章でも映像でも同じです

AIによって制作の入口はかなり簡単になりました。

その分、「完成したように見えるもの」と「本当に完成しているもの」を見分ける能力の価値は、以前より分かりやすくなっているのかもしれません。

-業界・キャリア
-,