Pantoneが2026年9月16日、Pantone Matching Systemへ224色の新色を追加しました。
新色はすでにFormula GuideやColor Bridgeなどの色見本、Pantone Connectへ反映されています。
グラフィックデザイナーにとって気になるのは「きれいな新色が増えた」ことだけではありません。クライアントや印刷会社から新しいPantone番号を指定された場合、手元の旧い色見本にはその色が載っていない可能性が出てきます。
旧Formula Guideへ224色だけ追加できるSupplementも登場

すでにPantone Formula Guideを持っている人が、224色のためだけに新しいガイドを一式買い直す必要があるのか。
今回、Pantoneはそのための選択肢も用意しています。
既存のFormula Guideへ新色を追加する「Formula Guide Supplement Coated & Uncoated」が発売され、今回追加された224色を単独で確認できるようになりました。Pantone公式では、このSupplementを既存ユーザー向けに期間限定で提供しています。
Coated(コート紙)は表面に塗工を施した紙、Uncoated(非塗工紙)は上質紙など表面を塗工していない紙を指します。同じインキでも紙への染み込み方や光の反射が変わるため、Pantoneではそれぞれの紙上で色を確認できるようにしています。
SupplementにもCoatedとUncoatedの両方が収録されているため、新色が紙によってどう変わって見えるかを現物で比較できます。
仕事でPantone指定を頻繁に使うものの、現在のFormula Guide自体には不満がない人なら、まず確認したい製品です。
224色だけではなく「5色のベースインキ」も追加
Pantone公式FAQを見ると、今回の変更は224色を追加しただけではありません。
224色の新しい混色に加え、5色の新しいベースインキが追加され、合計229色が新たに加わったと説明されています。
ベースインキは、Pantoneの特色を印刷会社で調合するときに材料として使う基本のインキです。Pantone Formula Guideには各色をどのベースインキで、どの割合で混ぜるかという調合情報が記載されています。
つまり、新しい224色は既存色の番号を増やしただけではなく、その色を印刷現場で再現するための仕組みまで更新されています。
デザイナー側では新しい色番号を選べば済む場合が多いものの、印刷会社側では新色を調合できる環境が整っているか確認が必要になるケースも考えられます。
新しいPantone番号を使ったデータを入稿するなら、特にサービス開始直後は印刷会社へ対応状況を確認しておくほうが安全でしょう。
Formula Guide、Color Bridge、Solid Chipsなどが新色対応
224色は、Pantone Graphics Systemの複数製品へ追加されています。
Pantone公式FAQでは、次の製品が新色へ対応しています。
- Pantone Formula Guide
- Pantone Color Bridge
- Pantone Solid Chips
- Pantone Solid Guide Set
- Pantone Reference Library
- Pantone Portable Guide Set
- Pantone Essentials Set
- Pantone Solid Color Set
Formula Guideは、Pantoneの特色を扇形の色見本で確認し、色番号やインキの調合情報を参照するためのガイドです。
一方のColor Bridgeは、Pantoneの特色と、それをCMYKで再現した場合の近似色を並べて比較できる色見本です。
CMYKは、シアン・マゼンタ・イエロー・ブラックの4色を組み合わせて色を作る一般的なカラー印刷方式です。Pantoneの特色はあらかじめ調合したインキそのものを使うため、CMYKへ変換すると完全に同じ色を再現できない場合があります。
今回更新されたColor Bridgeでは、224色の新しいPantoneカラーについても、それぞれに近いCMYK値を確認できます。RGBとHTMLの相当値も収録されています。
Webと印刷物の両方を担当するデザイナーなら、特色指定したブランドカラーをWebサイトではどのRGB値で扱うか、といった確認にも使えます。
MetallicsとPastels & Neonsには新色追加なし
手元にあるPantone製品すべてが更新対象になったわけではありません。
Pantone公式FAQによれば、MetallicsとPastels & NeonsのGuideおよびChip Bookには今回、新色は追加されていません。 パッケージの表紙デザインは変更されていますが、収録色そのものの追加ではありません。
Metallicsは金属的な光沢を持つPantoneカラー、Pastels & Neonsはパステルカラーと蛍光色をまとめたPantoneの色体系です。
「2026年にPantoneが更新されたから、持っている色見本を全部更新しないといけない」と考える必要はありません。
今回確認するべきなのは、主にPMSのSolid Colorsを使っている場合です。
Pantone Connectにも224色が追加

物理的な色見本だけでなく、デジタル側も更新されています。
224色はPantone Connectと、Adobe Creative Cloudで利用するPantone Connect Extensionからアクセスできます。
Pantone Connectは、Pantoneカラーの検索、パレット作成、色指定などをデジタル上で行うPantoneのサービスです。Adobe Creative Cloud向けの拡張機能を使えば、IllustratorやPhotoshopなどの制作フローからPantoneカラーへアクセスできます。
ここで注意したいのは、モニターに表示された色だけを見て印刷結果を判断しないことです。
ディスプレイはRGBの光で色を表示しますが、印刷物は紙にインキを載せて色を作ります。
特にPantoneを使う目的が「印刷された特色を正確に指定すること」なら、最終的な判断には物理的な色見本を使うほうが確実です。
Pantone Connectで候補を探し、Formula GuideやSolid Chipsで現物を確認する、と役割を分けると使いやすくなります。
今回増えたのは鮮やかな色だけではない
Pantoneは今回の224色について、すべての色相領域を広げるように選定したと説明しています。
赤にはピンクを含んだ力強い色、ピンクには淡いローズから遊びのある色、オレンジには花、果実、大地を思わせる色、黄色にはアースカラーから柑橘系までが追加されました。
さらにブルー、グリーン、パープル、ニュートラル系にも新色が加わっています。
Pantoneは背景として、ミニマリズム一辺倒から、より感情的で大胆な色使いやパターンを取り入れるマキシマリズムへの関心の高まりを挙げています。
マキシマリズムは、要素を極力減らすミニマリズムとは対照的に、色、柄、装飾、形などを積極的に組み合わせる表現です。ただ情報を増やすのではなく、多くの要素を意図的に構成して強い世界観を作ります。
その傾向を見せるため、Pantoneは新色から5色ずつ選んだ4種類のカラーパレットも公開しています。
Desire for Pleasure

食欲や感覚的な楽しさをテーマにしたパレットです。
鮮やかなピンク、赤、黄色、オレンジなどを組み合わせ、甘さや果実を思わせる強い色彩で構成されています。
Desire for Exquisite

熟した果実や華やかな花から着想した、より重厚なパレットです。
チョコレート系やグレープ系の深い色に、ピーチ、赤、オレンジを組み合わせています。
Oxygenating

自然界の鮮やかな色から構成されたパレットです。
アンバー、シトラスグリーン、植物を思わせるグリーンなどが入り、自然を題材にしながら彩度を落としすぎない配色になっています。
Beyond Boundaries

アクア、ラベンダー、パープル、ライムグリーン、ベージュを組み合わせたパレット。
レトロと未来的な印象を同時に持たせた配色として提案されています。
Pantoneが示すパレットをそのまま使う必要はありません。
むしろグラフィックデザイナーにとって面白いのは、「224色を追加した」というシステムの更新と、「今この色を増やした」という色彩傾向を分けて見られるところです。
なぜPantoneは今になって色を増やすのか
「すでに大量の色があるなら、224色を追加して何が変わるのか」と思うかもしれません。
色をデジタル上だけで考えれば、RGBの数値を変えることで膨大な色を作れます。
Pantoneの場合は事情が違います。必要なのは新しい色を画面上で作ることではなく、その色を印刷現場でも繰り返し再現できるようにすることです。
Pantoneは今回、Pantone Color Instituteによる色彩傾向の分析と、カラーサイエンスチームによる技術的な検証を組み合わせて新色を選定しています。印刷時の再現性や安定性も考慮されています。
再現性は、同じ条件で印刷したときに同じ色を繰り返し作れる性質です。ブランドカラーのように制作時期や印刷会社が変わっても色を揃えたい仕事では重要になります。
「画面できれいな色を見つけた」だけでは、世界共通の色指定にはなりません。
インキとして調合でき、紙へ刷り、別の現場でも同じ指定を共有できるところまで作って初めて、PMSへ追加する意味が出てきます。
同人誌やZINEでもPantone新色は使える?
商業パッケージやブランドデザインだけの話ではありません。
同人誌やZINEでも、印刷会社が特色印刷へ対応していればPantone番号を指定できる場合があります。
特色印刷は、通常のCMYK4色だけではなく、あらかじめ調合した専用インキを使って印刷する方法です。表紙の一部分だけ鮮やかな色にしたり、作品のキーカラーを狙った色で刷ったりするときに使われます。
ただし、すべての同人誌印刷所がPantoneの全色へ対応しているわけではありません。
印刷所独自の基本色から選ぶサービスもあれば、DICなど別の色番号で指定する場合、Pantone番号を参考値として調色する場合もあります。
今回追加されたばかりの224色については、なおさら「Pantoneに載っているから指定すれば必ず刷れる」とは考えないほうがいいでしょう。
使いたい新色を見つけたら、入稿前に印刷所へ色番号を伝え、対応可能か確認するのが確実です。
古いPANTONE色見本はもう使えない?
224色が増えたからといって、手元の旧版に載っている色が突然使えなくなるわけではありません。
今回の変更は既存色をすべて別の色へ置き換えるものではなく、新しい選択肢を追加する更新です。
ただし、古い色見本には別の問題があります。
物理的な色見本は紙とインキで作られているため、長期間使えば光、湿気、保管環境などの影響を受けます。色そのものが経年変化すれば、正確な色確認には向かなくなります。
そのため「新色が欲しいか」と「今持っている色見本の状態が良いか」は分けて考えたほうがいいでしょう。
既存色で仕事が完結しており、色見本の状態にも問題がなければ、新色追加だけを理由に即座に一式更新する必要性は低いかもしれません
一方、クライアントから最新のPantone番号を受け取る仕事が多い人や、パッケージ、ブランディング、印刷物の色指定を日常的に行う人なら、新色を確認できる環境は早めに用意しておいたほうが仕事はスムーズです。
今回Pantoneが224色だけを収録したSupplementを用意したのも、その需要を考えれば納得できます。
色見本を丸ごと更新するのか。新色だけ追加するのか。デジタルではPantone Connectを使うのか。
224色増えたこと以上に、自分の色指定環境がどの世代のPantoneを基準にしているのかを一度確認しておきたいアップデートです。
関連リンク
Pantone「224 New PMS Colors」公式発表
Pantone Graphics FAQ|224色・5色のベースインキと対応製品
Formula Guide Supplement Coated & Uncoated|Pantone