JAGDA Exhibition 2026

イベント情報

全国40組のグラフィックデザインを一度に見られる「JAGDA Exhibition 2026」10月2日から開催

東京で活躍するデザイナーの仕事は目にする機会が多くても、北海道から沖縄まで、各地域で今作られているグラフィックデザインをまとめて見る機会はそう多くありません。

全国8地域から40組のグラフィックデザイナーが集まる「JAGDA Exhibition 2026」が、2026年10月2日から東京ミッドタウン・デザインハブで開催されます。ポスターだけを集めた展示ではなく、ブランディング、パッケージ、商品開発、印刷、出版など、それぞれ異なる環境で活動するデザイナーの近作を一度に見られる展覧会です。

会期は10月25日まで。入場は無料です。

北海道から九州まで、8地域40組が集まる

「JAGDA Exhibition」は、日本グラフィックデザイン協会(JAGDA)の全国ネットワークを使った展覧会です。

2025年に続いて2回目となる今回は、北海道、東北、関東甲信越、東京、中部、関西、中四国、九州の8地域から、それぞれ5組ずつ参加。合計40組の近作が東京へ集まります。

JAGDAには全国約3,000人の会員がいます。

ただ、普段目にするデザインメディアや展覧会では、どうしても東京を中心とした仕事が多くなります。

今回の展示では、地域ごとに活動しているデザイナーを同じ場所で見比べられます。

地元企業のブランディング、地域の商品パッケージ、文化施設の仕事、自主制作。クライアントも制作環境も異なれば、同じ「グラフィックデザイン」という仕事でもアウトプットは変わります。

作品単体を見るだけでなく、「この仕事はどこで、誰に向けて作られたのか」まで見ると面白くなりそうです。

同じ展覧会なのに、告知ビジュアルが8種類ある

今回の展示で特に見ておきたいのが、告知ビジュアルです。

普通なら展覧会のキービジュアルを一つ作り、ポスター、Web、SNSなどへ展開します。

「JAGDA Exhibition 2026」では、その方法を取っていません。

参加デザイナーが地域ごとにチームを組み、8種類の告知ビジュアルを制作しました。

伝えるイベントは同じ。タイトルも同じ。会期も会場も同じ。それなのに、ビジュアルは8種類あります。

これはデザインを仕事にしている人には、なかなか面白い比較材料です

「同じ情報を渡されたとき、別のデザイナーならどう考えるのか」をそのまま見比べられるからです。

  • 配色が違うだけなのか
  • 写真を使うのか
  • 文字を主役にするのか
  • 情報量をどこまで削るのか
  • 地域性をビジュアルへ入れるのか、それとも入れないのか

完成した8案を横に並べれば、普段のコンペ案を見るような感覚でも観察できます。

「正解のデザイン」を探す展示ではない

デザインを勉強していると、良いデザインの正解を探したくなることがあります。

余白はこれくらい。文字サイズはこれくらい。色数は絞る。写真はこう配置する。

もちろん基本は必要です。でも、同じ依頼に対して8種類の答えが成立しているなら、正解は一つではありません。

重要なのは、なぜその形を選んだのかです。

地域別に制作された告知ビジュアルは、その違いを考える材料になります。

  • 自分ならどれを選ぶか
  • なぜその案を良いと思ったのか
  • 逆に、自分では絶対に作らなそうな案はどれか

展覧会を見ながらそこまで考えると、単なる作品鑑賞ではなくなります。

紙を「めくって」から撮影するグラフィックも

北海道から参加する足立詩織は、「peeeel」と呼ばれる作品を制作しています。

幾重にも重ねた色紙へ切り込みを入れ、それをめくり、最後に写真として仕上げる表現です。

パソコン上で色面を作るのではなく、物理的な紙の層を使っています。

完成した画像だけを見れば平面のグラフィックですが、その手前には紙を重ねる、切る、めくる、撮影するという工程があります。

ここは紙ものを作る人なら見ておきたいところです。

デジタルで完成データを作り、それを最後に紙へ印刷するだけが紙のグラフィックではありません。

紙自体を加工し、その状態を素材として再びグラフィックへ戻す方法もあります。

「紙を何に印刷するか」ではなく、「紙そのものをどう使うか」と考えると、表現の方向が一気に増えます。

土や植物から顔料を作り、印刷まで考えるデザイナーも

東北から参加する吉田勝信は、デザイナーであり、プリンターでもあります。

活動の特徴は、材料調達、素材研究、工業技術まで横断していること。

近年は生態系や生産現場から素材を採集し、そこから顔料を開発したり、「超特殊印刷」と呼ぶ印刷表現を展開したりしています。

顔料は、インクや絵具などに色を与える粒子状の材料です。 水や油に溶ける染料とは異なり、細かな粒子を媒体の中へ分散させて色を作ります。

デザイナーの仕事というと、印刷会社から紙見本を借り、用意されたインクや加工から仕様を選ぶところまでを想像しがちです。

そこからさらに遡り、「そもそも何で色を作るのか」まで触っているわけです。

印刷物のアイデアを考えるとき、特殊紙や箔押しのカタログだけを見ていると、選択肢は既製品の中に閉じます。

材料そのものから考える人の仕事を見ると、印刷に対する距離感も変わりそうです。

本を作り、アートブックの書店まで運営するデザイナー

関西からは、奈良を拠点とする長岡綾子も参加します。

紙媒体を中心としたグラフィックデザインに加え、アートワーク制作や本の出版も行い、2024年には奈良でアートブックを扱う書店「BO/OK」をオープンしました。

東京アートブックフェアでは「TABF Talent Award」の受賞歴もあります。

ここも自主出版やZINEを作っている人には気になる活動です

  • 本をデザインする
  • 自分でも出版する
  • さらに、それを売る場所まで作る

デザインを「依頼されたものを形にする仕事」だけに限定せず、何を作り、どこで見せ、どう売るかまで自分で組み立てています。

個人で活動するクリエイターが増えた今、この距離感は参考になりそうです。

セルフプロダクトまで作る若手ユニットも

北海道から参加する「ピチクパチク」は、1995年生まれの加藤佑弥と坂本秀彦によるクリエイティブユニットです。

デザイン会社勤務を経て2023年に独立。クライアントワークだけでなく、セルフプロダクトの開発も行っています。

セルフプロダクトは、依頼を受けて作るのではなく、自分たちで企画し、自分たちの商品として作るものです。

グラフィックデザイナーが自分の商品を持つと、仕事の見え方も変わります。

パッケージだけ格好よくすれば終わりではありません。原価、製造数、価格、販売方法、在庫、発送まで考えなければ商品になりません。

逆に、自分で販売まで経験すると、クライアントの商品をデザインするときにも「店頭でどう見えるか」「本当にこの加工へ予算を使うべきか」といった視点が増えます。

作品だけでなく、デザイナーがどこまで仕事の範囲を広げているのかを見るのも今回の展示の楽しみ方です。

地方のデザイン=「ご当地デザイン」ではない

全国のデザイナーを集める展示と聞くと、地域の名産品や観光ポスターが並ぶ姿を想像するかもしれません。

でも、今回参加する40組の活動を見ると、それだけではありません。

企業ブランディング、パッケージ、商品開発、出版、タイポグラフィ、アートワーク、セルフプロダクト、特殊印刷など、領域はさまざまです。

地域で仕事をすることと、「地域っぽいデザイン」を作ることは別です。

東京に大きな制作会社が集中していた時代と比べ、現在は場所を問わず仕事を受けやすくなりました。

その一方で、土地にいるから出会える素材、産業、企業、文化があります。

全国40組を一度に見ることで、「どこでデザインするか」がアウトプットへどれくらい影響するのかも比べられます。

10月2日は制作背景まで聞ける

初日の10月2日には、オープニングトークも開催されます。

登壇するのは、北海道の西本未祐、東北の吉田勝信、関東甲信越の秋吉愛、東京の岡本太玖斗、中部の室谷かおり、関西の西山拓磨、中四国の矢吹菜美、九州の矢澤拓隼。

8地域から一人ずつ参加します。

トークでは展示の見どころに加えて、地域ごとに制作した告知ビジュアルの背景も話す予定です。

完成した8種類を見て「自分ならこう考える」と一度予想してからトークを聞くのも面白そうです。

  • なぜこの形になったのか
  • 最初からこの案だったのか
  • 複数人でどのように方向を決めたのか

完成品から推測したことと、作った本人の話が一致するとは限りません。

むしろ外れたところに、自分にはなかった考え方があります。

オープニングトークは18時30分から19時30分まで。参加無料、定員80名で、オンライン配信は予定されていません。

40組全部を「好き・嫌い」で見ない

40組も並ぶと、当然ながら好みではないデザインもあるはずです。

そこを飛ばして好きな作品だけ見るのは、ちょっともったいない。

自分が普段作らないものほど、「なぜ自分はこれを選ばないのか」を考えられるからです。

  • 色なのか
  • 書体なのか
  • 情報量なのか
  • 写真の扱いなのか
  • そもそもデザインの目的が自分の仕事と違うのか

PinterestやInstagramで参考資料を集めていると、アルゴリズムも自分自身も、いつの間にか好きなものばかり選ぶようになります。

全国40組をまとめて見る展示なら、その外側へ強制的に連れていってもらえます。

グラフィックデザインの引き出しを増やしたいなら、気に入った作品を保存するだけでなく、自分なら選ばなかった答えを観察する。今回の展示は、そのための場所として使うのが面白そうです。

「JAGDA Exhibition 2026」は、2026年10月2日から10月25日まで東京ミッドタウン・デザインハブで開催。11時から19時まで、会期中無休、入場無料です。

関連リンク

JAGDA|JAGDA Exhibition 2026 公式情報
東京ミッドタウン・デザインハブ|展覧会公式ページ
東京ミッドタウン・デザインハブ|オープニングトーク詳細

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