Figmaは2026年9月11日、日本国内でFigmaのファイルデータを保存できる「Data Residency」の提供を開始しました。
対象はEnterpriseプランで、Figma DesignやFigJamなどの主要なファイルデータを国内に保管できます。
データレジデンシー(Data Residency)とは、企業や組織が扱うデータを「どの国・地域のデータセンターに保存するか」を指定・管理する考え方です。セキュリティや社内規定、業界ごとのデータ管理要件への対応で重視されます。
保存先はAWSの東京・大阪リージョン
Figmaのヘルプセンターによると、日本向けのData ResidencyではAWSの「ap-northeast-1」がプライマリ、「ap-northeast-3」がデータ復旧用として設定されています。AWSの地域名では、それぞれ東京リージョンと大阪リージョンにあたります。
リージョンとは、クラウドサービスのデータセンターを地理的な地域ごとにまとめた単位です。AWSでは東京、大阪、シンガポールなど、世界各地にリージョンが設けられています。
これまで「Figmaを使いたいが、業務データを国外へ保存することが社内ルール上難しい」といった企業にとって、導入時のハードルを一つ下げる変更になります。
特に金融、医療、公共機関など、保存場所を含めて厳格なデータ管理が求められる組織への影響が大きそうです。Figma自身も、公共部門、ヘルスケア、金融サービスなどを今回の機能が想定する利用先として挙げています。
すべてのFigmaデータが日本に保存されるわけではない
注意したいのは、「Figmaのデータが全部日本国内へ移る」という機能ではないことです。
Figmaの現在のヘルプセンターでは、国内保存の対象と対象外が細かく公開されています。
| データ | 日本国内への保存 |
|---|---|
| シェイプ | 対応 |
| テキストボックス | 対応 ※@メンションを除く |
| 付箋 | 対応 ※@メンションを除く |
| フレーム | 対応 |
| コンポーネント | 対応 |
| 画像 | 対応 |
| 動画 | 対応 |
| コメント | 対象外 |
| プラグイン | 対象外 |
| ファイル名 | 対象外 |
| フォント | 対象外 |
| ファイルのプレビュー画像 | 対象外 |
| Dev Mode/Code Connectのコード | 対象外 |
| AIチャット | 対象外 |
この違いは、企業が「国内保存対応」という言葉だけを見て導入判断をしないためにも押さえておきたいポイントです。
デザインそのものを構成するシェイプ、テキスト、画像、動画などは対象ですが、コメントやファイル名、AIチャットなどまで含めて国内へ限定されるわけではありません。
Figma Designだけでなく、ヘルプセンターではFigJam、Figma Slides、Figma Draw、Figma Buzz、Figma Makeの対象ファイルについても国内保存できるデータが案内されています。
インターネット上へ公開したデータも対象外
もう一つ重要なのが、公開済みデータです。
Figmaによると、Webサイトやアプリ、ブログなどとしてインターネット上に公開されたファイルデータはData Residencyの対象外となり、現在は米国でホスティングされます。
また、Data Residencyが対象にするのは基本的に「保存されているデータ」です。通信中のデータまで日本国内だけを通ることを保証する機能ではありません。
そのため、社内のセキュリティ担当者が確認する場合は、
- 何のデータが国内保存されるのか
- コメントやメタデータをどう扱うのか
- AI機能を利用するのか
- 公開データをどう扱うのか
まで分けて確認する必要があります。
対象はEnterpriseプラン
Data Residencyを利用できるのはFigmaのEnterpriseプランです。
個人でFigmaを使っているデザイナーが設定画面から「日本保存」を選べるようになった、というアップデートではありません。
企業・大規模組織向けのデータ管理機能と考えた方が正確です
組織の管理者は、Figmaの管理画面にある「Data storage localization」から現在の保存地域を確認できます。保存先を変更する場合はFigmaのサポートチームへの連絡が必要です。
デザイナーにも無関係ではない理由
Enterprise向けの機能なので、「フリーランスや個人のデザイナーには関係ない」と見えやすいニュースです。
ただ、制作現場では話が変わります。
大企業のWebサイトやアプリ、金融サービス、医療サービス、公共系案件などでは、使用するクラウドサービス自体がセキュリティ審査の対象になることがあります。デザイナー側がFigmaを使いたくても、クライアント側のデータ管理基準によって別の制作環境を指定されるケースはあり得ます。
国内保存という選択肢が加われば、そうした案件でもFigmaを採用できる余地が広がります。
Figmaは2026年6月30日時点で、日経225企業の3分の2がFigmaを利用していると明らかにしています。また、日本はアクティブユーザー数でFigmaの世界トップ5市場に入っています。
すでに日本のデザイン現場へ広く入り込んでいるからこそ、「機能が足りない」という段階から、企業側のセキュリティや管理ルールまで満たせるかどうかが次の競争になっているとも言えます。
Governance+と組み合わせて管理をさらに強化
FigmaはEnterprise向けに「Governance+」という追加機能も提供しています。
ガバナンスとは、組織がサービスを安全かつルールに沿って利用するための管理体制を指します。誰がアクセスできるか、データを外へ持ち出せるか、操作履歴をどこまで確認できるかといった管理が含まれます。
Governance+では、
- ファイルのエクスポート制限
- IPアドレスによるアクセス制限
- 操作記録の取得
など、組織向けの管理機能を追加できます。
Enterpriseプランへのアドオンとして提供されています
Data Residencyが「データをどこへ置くか」を管理する機能だとすれば、Governance+は「誰が、どのようにデータへアクセスできるか」を管理する側の機能です。
両者を組み合わせることで、Figmaは単なるデザインツールから、企業の正式な制作基盤として求められる条件を埋めようとしています。
Figmaの競争軸が「機能」だけではなくなっている
Figmaのアップデートというと、デザイン機能やAI、プロトタイピングなどへ目が向きがちです。
しかし、利用企業が増えれば増えるほど重要になるのが、今回のような表から見えにくい部分です。
- どこにデータを保存するのか
- 誰がアクセスできるのか
- 社内監査へ対応できるのか
- 機密性の高いプロジェクトでも導入できるのか
特に大規模な制作組織では、「デザイナーが使いやすい」だけではツールを採用できません。
日経225企業の3分の2までFigmaが広がった今、日本国内でのデータ保存対応は新機能を一つ追加する以上の意味を持っています。
Figmaが日本市場で次に狙っているのは、デザイン部門だけでなく、セキュリティ部門や法務部門からも導入許可を得られる制作環境になることなのでしょう。
関連リンク
Figma「Figma launches data residency in Japan」
Figma Help Center「Enable localized file hosting」
Figma Help Center「Governance+ for Figma」