モリサワは2026年10月14日、フォントサブスクリプションサービス「Morisawa Fonts」で2026年度新書体35ファミリーの提供を開始した。
写研の「石井丸ゴシック」「本蘭明朝」など21ファミリーに加え、モリサワの新書体や多言語フォントが追加されている。
同時に、既存36書体の改訂も実施された。
一部には字形や字幅の変更が含まれるため、既存データを扱うデザイナーはアップデート内容を確認しておきたい。
写研フォント21ファミリーが追加

今回のアップグレードでは、写研とのOpenTypeフォント開発プロジェクトによる21ファミリーが追加された。
OpenTypeは、異なるOSやアプリケーションでの利用を想定したフォント形式で、文字の異体字や組版に関する情報も扱える。
注目されるのは、写研の歴史的な書体を現代の制作環境に合わせて再設計した「改刻フォント」だ。
「石井丸ゴシック」は、写研の創業者である石井茂吉氏のデザインをもとにしたオールドスタイルの丸ゴシック体。
対して「本蘭明朝」は、明瞭な文字の形に筆のニュアンスを残したモダンスタイルの明朝体となっている。
さらに、写研から提供されたアウトラインデータをもとに文字の追加や仕様の整理を行った「写研クラシックス」には、17ファミリーが加わった。
主な追加書体は以下のとおり。
- 石井丸ゴシック:石井茂吉氏のデザインをもとにした丸ゴシック体
- 本蘭明朝:伝統的な筆のニュアンスを持つ明朝体
- 淡古印:にじみやかすれを取り入れたデザイン書体
- ソラーレ:切り絵風の造形が特徴のデザイン書体
- ゴナ・ナール:既存書体に新たなウエイトを追加
ウエイトとは、フォントの線の太さを表す区分のこと。複数のウエイトが揃うと、同じ書体を使いながら見出しと本文で強弱をつけやすくなる。
欅丸ゴシック Oldstyleなども登場

写研フォント以外にも、モリサワの新書体12ファミリーとタイプバンクフォント2ファミリーが追加されている。
なかでも「欅丸ゴシック Oldstyle」は、欅シリーズの新たなラインナップとして登場した丸ゴシック体だ。
シリーズ共通のデザインコンセプトを持ち、既存の欅書体との組み合わせも想定されている。
そのほか、手書き風の表情を持つ「ゆらら丸ゴ」、近代活字の要素を取り入れた「くらもち銘石」「くろふね銘石」、装飾的なストロークが特徴の「タカピーク」なども追加された。
デザイン書体では「すすぐろ」「飛泉」、欧文書体では「Othoro Pro」などが登場。
日本語以外にも、ハングルや中国語のフォントが拡充されている。
書体の印象を確認したい場合は、今回公開された「新書体図鑑2026」が便利だ。
用途別に分類された見本帳で、各書体の特徴や組見本をまとめて確認できる。
既存36書体の改訂にも注意
今回のアップグレードでは、新書体の追加と同時に、既存36書体の改訂が行われた。
対象となったのは次の書体群だ。
| 対象 | 改訂書体数 |
|---|---|
| Clarimo UD KR Pro | 8 |
| UD新ゴ・UD新ゴNT(AP版) | 16 |
| Arphic Types | 12 |
| 合計 | 36 |
改訂内容には、字形やアウトラインの修正に加え、文字の幅や位置に関する変更も含まれる。
特に注意したいのが「UD新ゴ」「UD新ゴNT」のAP版だ。
モリサワによると、字形や記号の位置、アウトライン、罫線の連結不良などを修正しており、一部の文字では字幅も変更されている。
また、「Clarimo UD KR Pro」では、IllustratorやInDesignのプロポーショナルメトリクスを有効にした際、意図しない字送りが発生する問題が修正された。
プロポーショナルメトリクスとは、フォント内部に収録された文字幅や文字詰めの情報を使って、文字の間隔を調整する機能のこと。フォントの内部情報が変更されると、同じ設定でも文字の配置が変わる場合がある。
モリサワは、今回改訂された36書体について、組体裁に影響する変更と影響しない変更の両方が含まれると説明している。
アップデート前に確認したいこと
改訂対象のフォントを使用している場合、特に以下のようなデータは確認しておきたい。
- 冊子や書籍など、改ページ位置が重要な組版データ
- 文字詰めを細かく調整したロゴやタイトル
- 罫線や特殊記号を使用した図表
- 過去に納品したデザインの修正・再入稿データ
モリサワのサポート情報によると、インストール済みの改訂対象フォントについては確認画面が表示され、更新をキャンセルすれば従来のバージョンを使い続けられる。
ただし、一度ディアクティベートすると、再アクティベート時には新しいバージョンがインストールされる。
旧バージョンを新規にインストールすることはできないため、進行中の案件がある場合は注意が必要だ。
新書体の利用方法と対象プラン

新書体は、Morisawa Fontsのサービスサイトから利用できる。
ログイン後、「フォントを探す」で「2026年度 新書体」を選択すると、今回追加されたフォントを検索できる。
使用したい書体をアクティベートすれば、対応する制作環境で利用できる。
対象プランは以下のとおり。
| プラン | 対応状況 |
|---|---|
| スタンダードプラン | 対応 |
| 学生・教職員向けスタンダードプラン | 対応 |
| Select8 | 対応 ただし写研フォントは対象外 |
| Select24 | 対応 |
| 業界別プラン | 対応 |
| Morisawa Fonts Webフォント | 対応 |
| TypeSquare | 新書体の提供対象外 |
| MORISAWA PASSPORT | 新書体の提供対象外 |
利用可能OSはWindows 11 25H2以降、macOS 12以降。
常時インターネット接続が必要とされている。
特にSelect8を利用している場合は、今回追加された写研フォントがすべて対象外となる点に注意したい。