AIに素材を渡せば、動画を自動で編集してくれる。ここまではすでに珍しくありません。
Digital Nirvanaが2026年9月3日に発表した「RoughCut」は、そこからもう一歩進みます。
素材を分析してラフカットを自動制作するだけでなく、なぜそのカットを選び、なぜ別のカットを使わなかったのかまで説明するAI編集プラットフォームです。
RoughCutでできること
主な仕組みを整理すると、次のようになります。
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| 素材解析 | 人物、ショット、雰囲気、字幕、画面内情報などを解析 |
| 意味検索 | キーワード一致だけでなく映像の内容から素材を検索 |
| AIラフ編集 | 自然言語の指示からタイムラインを自動構築 |
| 選択理由の説明 | 採用・不採用にした素材の理由を表示 |
| 会話による修正 | AIと会話しながら編集内容を変更 |
| 手動編集 | 通常のマルチトラックタイムラインで人間が調整 |
| 外部連携 | 完成したラフカットを既存の仕上げ環境へ渡せる |
完全自動で動画を完成させることより、編集者が最初に行う膨大な素材確認とラフ編集を短縮することに重点が置かれています。
まず映像の「意味」を理解する
RoughCutへ映像を取り込むと、素材ごとにメタデータを作成します。
単純なファイル名や撮影日時だけではありません
- ショットの種類
- 映っている人物
- 雰囲気
- 画面上のグラフィック
- 音声の文字起こし
- その素材がストーリー上でどんな役割を持つか
といった情報まで分析します。
そのため、素材を探すときも「IMG_3245.mov」のようなファイル名を覚えておく必要はありません。
内容を説明して検索できます
大量のインタビュー、イベント、スポーツ映像などを扱う現場では、この部分だけでもかなり時間を減らせそうです。
文章で指示するとラフカットを作成
編集するときは自然な文章で内容を指示します。
RoughCutのAI Co-Pilotが素材を選び、マルチトラックタイムラインへ配置します。
ここまでは既存のAI編集ツールでも似た機能があります
RoughCutが特徴として強く押し出しているのが、その後です。
「なぜその素材を使ったか」を説明
AIが動画を編集すると、一つ問題があります。
なぜその編集になったのか分からないことです。
Digital Nirvanaは、従来のAI編集ツールについて「素材を入れると完成物が出てくるが、なぜその判断をしたのか誰も説明できない」状態を問題視しています。
RoughCutでは、AIが選択した素材だけでなく、使わなかった素材についても判断理由を確認できます。
編集者はその説明を見ながら、
- このカットは残す
- この判断は変える
- 別の素材を使う
と修正できます。
AIに編集権限を丸ごと渡すのではなく、判断過程を人間が確認できるようにした設計です。
AIと会話しながら編集を変更
最初に作られたラフカットが完成形ではありません。
- この部分をもう少し短く
- インタビュー中心に
- この人物が映っている素材を増やす
といった追加指示を会話形式で行えます。
もちろんAIだけで操作する必要もなく、通常のマルチトラックタイムラインを直接編集できます。
AIに任せる部分と、人間が直接触る部分を行き来できる形です。
数時間かかっていた作業を数分へ
Digital Nirvanaによると、早期アクセスを利用している放送事業者では、イベントのハイライト編集にかかる時間が数時間から数分まで短縮された事例があるとしています。
ただし、これはメーカー側が紹介している早期利用事例です
すべての編集で同じ速度になるとは限らないため、実際の精度については正式提供後の検証を待った方がよいでしょう。
AI編集で「説明できること」が重要になってきた
RoughCutで面白いのは、自動編集そのものより説明機能です。
生成AIが制作ツールへ入るほど、
- なぜこの画像になったのか
- なぜこの文章になったのか
- なぜこの映像を選んだのか
が分からない問題は大きくなります。
趣味の動画なら、完成したものが気に入れば十分かもしれません。
しかしテレビ番組、報道、広告、企業映像では、編集判断に理由が必要になる場面があります。
そこで「AIが何を考えてこうしたのか」を人間が確認できることが、ツール選びの条件になる可能性があります。
AIが編集者になるというより「最初の編集助手」に近い
RoughCutの設計を見ると、編集者そのものを置き換えるツールとは少し違います。
大量の素材を整理する。候補を探す。最初の並びを作る。その理由を説明する。
そこまでをAIが担当し、最終判断は編集者が行います。
映像制作ではラフカットまでにかなり時間がかかります
完成形のセンスまでAIへ任せるより、そこへ到達する前の整理作業を減らす方が、実際の制作現場では使いやすいかもしれません。
RoughCutは2026年9月11〜14日にアムステルダムで開催されるIBC2026で初めて一般公開される予定です。