「最近のイラストをまとめて見たい」と思っても、SNSだけで探していると自分が普段見ている作家やジャンルへ偏りがちです。
国内外170名のクリエイターを一冊にまとめたイラスト年鑑『VISIONS 2027 ILLUSTRATORS BOOK』が、2026年9月26日にKADOKAWAから発売されます。
カバーを担当するLAM氏を除く169名はシリーズ初掲載。352ページのフルカラーで、現在進行形のイラスト表現を横断して見られる作品集です。
170人中169人を入れ替えた、2027年版のイラスト年鑑
『VISIONS』は、pixivが監修するイラスト年鑑です。
2020年から刊行されており、KADOKAWAの最新書誌ではシリーズ世界累計42万部。日本語版だけでなく英語版・中国語版も展開されています。
2027年版に掲載されるクリエイターは170名。
特徴的なのは、カバーイラストを担当するLAM氏以外の169名が、歴代『VISIONS』へ一度も掲載されていない作家であることです。
毎年同じ有名作家を並べてシリーズ化するのではなく、作家を入れ替えることで、その年ごとのイラストレーションを見せる構成になっています
これは資料として使う人にも大きいところです。
絵をたくさん見る目的なら、好きなイラストレーターの個人画集ももちろん良い。ただ、ひとりの作家だけを見続けると、構図、配色、人物の描き方、画面密度などの方向性もある程度まとまります。
170人を一気に見る本なら、その逆ができます。
同じ人物イラストでも、
- 顔をどこまでデフォルメするか
- 背景を描くか
- 線を残すか
- 色面で作るか
- 画面を情報で埋めるか
- 余白を取るか
ひとつの正解を覚える本ではなく、170通りの答えを比較できる本と考えると使い道が見えてきます。
日本だけでなく、中国・韓国・アメリカ・インドなどから参加

収録作家は日本国内に限定されていません。
中国、韓国、アメリカ、インド、タイ、フィリピン、マレーシア、オーストラリアなど、各国で活動するクリエイターも参加しています。
『VISIONS』では海外イベントにも参加し、現地でクリエイターと交流しながら書籍への参加を依頼する活動を行っています。
SNSが普及したことで、日本のイラストレーターが海外の作家から影響を受けたり、その逆が起こったりすることは珍しくなくなりました。
それでも、普段使っているSNSのおすすめ欄だけを見ていると、表示される作品にはどうしても偏りが生まれます。
海外作家まで混ぜて紙の本へ固定してしまう年鑑には、アルゴリズムとは違う作品との出会い方があります。
「好きな絵を探す」というより、自分が普段なら探しに行かない絵まで見るために使うのも良さそうです。
LAMの描き下ろし表紙、メイキングも収録
カバーイラストはLAM氏による描き下ろしです。
力のある目元と鮮やかな色彩を使った人物表現で知られるイラストレーターで、本書には完成したカバーだけでなく、制作メイキングと特別インタビューも収録されます。
完成作品だけを見ると、「どう描けばここへ辿り着くのか」が見えません。
イラストの勉強という意味では、完成した一枚より途中経過のほうが参考になることもあります。
- ラフの時点でどこまで決めるのか
- 人物を先に作るのか
- 画面全体の色から考えるのか
- 完成時には見えなくなった線や変更点は何だったのか
すでにLAM氏の作品を知っている人なら、表紙を目当てにするだけでなく、完成品と制作途中を行き来して見るのが面白そうです。
デザインはグラフィックデザイナー・パンチが担当
本そのもののデザインとクリエイティブディレクションは、グラフィックデザイナーのパンチ氏が担当します。
パンチ氏は2020年刊行の『VISIONS』創刊号にはイラストレーターとして参加しており、今回は作品を掲載される側ではなく、作品集を作る側としてシリーズへ戻ってきました。
クリエイティブディレクションは、制作物全体の表現方針を設計し、複数の要素をひとつの方向へまとめる仕事です。 書籍なら表紙だけではなく、本文レイアウト、文字、写真やイラストの見せ方などを含めて全体の体験を考えます。
170人の作品を一冊へまとめる本では、この編集とデザインが重要です。
作家ごとに色も画面密度も違うため、ページ自体のデザインを強くしすぎると作品とぶつかります。一方、すべてを同じテンプレートへ押し込めると、作品集として単調になりやすい。
イラストを見るだけでなく、大量の異なる作品を一冊にどう整理しているかを見ると、ポートフォリオや合同誌を作る人にも参考になるはずです。
画面で見るイラストを、紙でどう見せるか
『VISIONS 2027』はB5判、352ページ、フルカラー。印刷には「ブリリアントパレット」が使われます。
ブリリアントパレットは、広済堂が展開する高彩度印刷です。 一般的なカラー印刷より鮮やかな色域を狙い、イラストや写真など色の再現性を重視する印刷物で利用されています。
デジタルで絵を描く人にとって、画面と紙の色の違いは避けて通れません。
ディスプレイはRGBの光で色を表示しますが、一般的なカラー印刷はCMYKのインキで色を作ります。
RGBは赤・緑・青の光を組み合わせて色を表示する方式、CMYKはシアン・マゼンタ・イエロー・ブラックのインキを重ねて色を作る方式です。 RGBで鮮やかに見えていた色が、そのまま通常のCMYK印刷では再現しにくいことがあります。
特に発光感の強い青、紫、ピンクなどを多用するイラストでは、画面と印刷物で印象が変わりやすくなります。
『VISIONS 2027』を資料として見るなら、「この作家の色使いが好き」で終わらず、それが紙ではどう印刷されているかまで見たいところです。
同人誌や個人画集を作る人なら、自分の作品を印刷するときの参考にもなります。
イラストの「トレンド本」として見るときは注意したい

170人の現在の作品が載っているなら、「2026年の流行が全部わかる本」と考えたくなります。
ただ、そこは少し違います。
収録作家は編集・監修側が選んだ170人であり、イラスト界全体を統計的に調査したものではありません。
「今年はこの塗りが流行している」「この絵柄にすれば伸びる」と答えを探す本として見るより、今どんな表現が同時に存在しているのかを広く見る資料として使うほうが向いています。
むしろ絵を描く側なら、流行している共通点より「この人だけ全然違う」を探すほうが面白いかもしれません。
大量の作品を続けて見ていると、似ているものが自然と見えてきます。
- その中で妙に目が止まる一枚がある
- なぜ止まったのかを考える
- 色なのか、構図なのか、線なのか、人物の表情なのか
その分析を自分の絵へ持ち帰るほうが、流行の絵柄をそのまま真似するより使える資料になります。
「絵柄が決まらない」人にも大量の作品を見る意味がある

イラストを描き始めたころは、「自分の絵柄がない」と悩むことがあります。
でも最初から何も参考にせず、完全に独立した絵柄を発明する必要はありません。
- 目が好き
- この配色が好き
- この人の余白が好き
- 人物の頭身はこっちが好き
- 背景の描き込みはこのくらいが好き
大量の作品を見ると、自分が反応する部分を細かく分解できます。
170人載っている本なら、「好きな作家を一人見つける」だけではなく、好きな要素を170人の中から拾っていく使い方もできます。
SNSで保存した画像を増やすのと似ていますが、紙の本には一覧性があります。
ページを戻れば、数十人前の作品とすぐ比較できる。気になるページへ付箋を貼れば、自分だけの参考資料にもできます。
ポートフォリオを作るイラストレーターにも参考になる
掲載作品だけでなく、「どう見せられているか」にも注目したいところです。
イラストレーターが仕事を取るとき、絵が上手いだけでなく、相手が短時間で作風を理解できることが重要になります。
ポートフォリオへ30枚載せても、全部同じ情報量で並べれば強い作品が埋もれてしまいます。
- どの絵を大きく見せるか。
- どの順番で置くか。
- 何枚あれば作風が伝わるか。
170人を限られた352ページへ収録する作品集には、こうした「作家を短いページ数で見せる」編集の参考になる部分があります。
好きな作家のページを見つけたら、作品そのものと一緒に「なぜこの作品が選ばれているのか」まで考えてみると、ポートフォリオ作りにも応用できます。
9月26日発売、352ページで3,300円
『VISIONS 2027 ILLUSTRATORS BOOK』は、2026年9月26日発売です。
発売日:2026年9月26日(土)
定価 :3,300円(本体3,000円+税)
判型 :B5判(縦257mm×横182mm)
ページ:352
ページイラストの描き方を手順で教える技法書ではありません。
だから「目の描き方を知りたい」「パースを勉強したい」といった明確な課題があるなら、それぞれに特化した技法書を買ったほうが早いでしょう。
反対に、「最近どんな絵があるのか、とにかく大量に見たい」人とは相性がいい本です。
170人を見終わったあと、自分の好きな作家が何人増えているか。
さらに、その170人の中で「なぜかこの一枚だけ忘れられない」という作品が見つかれば、それだけでも自分の絵を考える材料になりそうです。
関連リンク
『VISIONS 2027 ILLUSTRATORS BOOK』公式書誌|KADOKAWA
『VISIONS 2027』刊行発表・掲載内容|KADOKAWAグループ
KADOKAWA公式ストア|VISIONS 2027 ILLUSTRATORS BOOK
掲載作家・作品情報|KAI-YOU
参加予定クリエイター
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